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[コラム] 電力買取制度って「正しい政策」か? [コラム]

最近、某首相から「脱原発」という言葉が飛び出した。放射能汚染の危険がある原発よりも、クリーンな再生可能エネルギーにシフトしようということのようで、発想としてわからなくもない。


グリーンテックビジネスに興味のある小職としては、グリーンビジネスが盛り上がりそうな話はどちらかと言えば歓迎であり、「脱原発」も否定はしない。しかし、「脱原発」を進める上で重要な「電力買取制度」の中身があまり検証されてないようで気になる。これをきちんと議論しないで話を進めるのは危険だと考えている。


太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、たいていコストが高い。一般家庭向けの現行の電気料金の価格は概ね20円台/KWhくらいなのだが、例えば太陽光発電のコストはこれよりもかなり高い(下記参照、ちょっと古いけど)。


引用: 太陽光発電のコスト

(省略) 。。。平成17年度における設備容量1kWあたりの平均価格(税抜68.4万円/kW:参考データ参照)を用いて、償却年数20年で計算した場合、利子や保守費用まで含めた太陽光発電量あたりのコストは47~63円/kWh程度と算出される。


今後、太陽電池等の再生可能エネルギーのコストが下がって、将来的には現行の電力価格と同程度になるという可能性はあるのだろうが、それがいつになるかはまだ見えない。再生可能エネルギー由来の電気の価格が一般の電気料金よりも高いうちは、これを促進させるためには「電力買取制度」が重要となってくる。例えば、太陽光パネルを設置した人は、設置から10年間ぐらい、電力会社に対して余剰電力を42円/kWhで販売できる、というような制度だ。


引用: 買取制度ポータルサイト
資源エネルギー庁 再生可能エネルギー推進室

太陽光発電の余剰電力買取制度平成23年度の買取価格が住宅用(10kW未満)42円/kWh等、住宅用(10kW以上)及び非住宅用40円/kWh等に決まりました。 


(同サイトから引用)


太陽光パネルを設置した人は、上記のような電力の販売によって収入を得ることが出来るので、太陽光パネルの設置コストの負担を軽減することが出来る。こうしたインセンティブを出すことによって、太陽光パネルなど再生可能エネルギーを政策的に促進しようという訳だ。


これはこれでよく出来た政策だと思う。ただ、この政策によって「得をする人」と「損をする人」が出てくることが問題だ。


「得をする人」は、自宅の屋根に太陽光パネルなどの再生可能エネルギーの設備を設置して電力を売った人、そうした再生可能エネルギーの関連業者(太陽電池メーカーや施工業者)などだ。太陽電池や風力発電を大規模に行う事業者にも買取制度が適用されるとした、そうした事業者も得をする部類に属することになるだろう。(例えば○○○バンク


一方、「損をする人」は買取制度によって上乗せされた電気料金を払わなければならない人だ。


買取制度による電気料金への上乗せ分は、例えば下記のように、標準家庭で月10~100円程度と試算されている。月10~100円ぐらいというのは、高いのだろうか、安いのだろうか。。。


引用: 太陽光サーチャージ(太陽光発電促進付加金)
標準家庭の月額負担は10~100円

一般電気事業者が太陽光発電の余剰電力の買取りを行う費用は、「太陽光発電促進付加金(仮称「太陽光サーチャージ」)」として、電気料金に上乗せし、すべての電気利用者が公平に負担する。太陽光サーチャージの季節変動を抑えることや自由化部門の契約期間が通常1年であること等を考慮し、前年度の買取総額を次年度に回収するスキームとする。

買取制度は平成21年11月からスタートするため、その費用を回収する太陽光サーチャージは、平成22年度当初より導入される。導入当初の負担額は、試算の結果0.1円/kWhとなり、標準家庭での負担額は月10~100円程度になる見込み。太陽光発電システムの設置者の増加に伴い買取総額も増えるため、年度を追うごとに一般家庭をはじめとする電力需要家の負担額も増えていく。


仮に、標準家庭の費用負担がざっくりと月100円、年1千円になったとした場合、買取制度で使われる10年間をかけると、1家庭当たり10年間で「1万円」を負担している勘定だ。これって本当に「安い」のだろうか?


そもそも、この「月10~100円」という試算は果たしてどのような前提で出てきたものが疑問だ。


きちんとした裏付けを取れていないのだが、電力買取制度が先行しているドイツでは、この制度によって電気料金が「2割程度」高くなったという説がある。電力買取制度によって、太陽光パネルの設置が進み、太陽電池メーカーや関連業界は大いに潤ったのだが、その代償として太陽光パネルとは何ら関係のない一般庶民の電気料金が2割上がったという。予定よりも多くの電力を買い取ることになってしまったからなのか、そのあたりの背景は不詳なのだが、事例としてよくよく研究する必要はありそうだ。


電力買取制度によって太陽光などの再生可能エネルギーが普及し、それによって全国民の電力料金が下がり、全国民がその恩恵を受けられるのであれば、電力買取制度は「正しい政策」と言えるだろう。


しかし、再生可能エネルギーを普及させても電力料金が下がらず、再生可能エネルギーに携わる人だけが潤い、そうでない人がコストを負担するだけで終わるのだとしたら、果たしてこれは「正しい政策」と言えるだろうか。


再生可能エネルギー政策は前向きに進めるべきだと思うが、電力買取制度によって国民が負担すべきコストの試算は重要だ。内容を分かりやすく国民に開示した上で、大いに議論すべき重要課題だろう。


CarlyleがIPO? ファンドのIPOってどう? [コラム]

米Carlyle Groupが年内のIPOを目指しているらしい。


Carlyleは世界有数のPEファンドで、資産規模は1,000億ドルを超える(約8兆円!)。日本でもバイアウト分野を中心に多くの実績を積んでいる超有名ファンドだ。そんなCarlyleがIPOを目指しているという。


引用: Carlyle Aims for IPO to Boost Buyout-Fund Capital, Conway Says
By Cristina Alesci - Dec 7, 2010 12:55 AM GMT+0900 

William Conway, the deal maker who helped build Carlyle Group into the world’s second-biggest private-equity firm, said the company is gearing up for a public share sale to amass permanent capital and contend with the growing challenge of raising money for buyout funds.


PEファンドの上場は珍しいことではないようで、Blackstone GroupやKohlberg Kravis Roberts & Co.といった大手ファンドも株式市場に上場している。とはいうものの、資金を数年単位で運用するPEファンドが、新たな資金を株式市場から調達するというのはどうも違和感がある。


Carlyleのような世界有数の資産を持つファンドが、IPOでいったい何を狙っているのか。


引用: Carlyle to raise $1bn in weak IPO market
By Henny Sender in New York

Carlyle, the private equity firm with $108bn under management, plans to raise more than $1bn with a initial public offering of stock but is likely to come to the market with a lower-than-expected valuation, according to bankers familiar with the matter.


FTの記事によると、CarlyleはIPOによって10億ドルの資金調達を狙っているとのこと。この記事を見る限り、資金調達目的のIPOのようだ。私の勝手な想像では、儲かっている大手PEファンドは「投資家、門前に列をなす」ような状況で、いろいろと大変な公募などしなくとも、私募でいくらでも資金が集まるようなイメージを持っていた。しかし、そうした簡易な私募ではなく、公募によって資金を調達したいらしい。


PEファンドが上場することで、公募による資金を調達して新たな投資を行うことで企業価値を高める、という成長シナリオはありえるのだろう。しかし、株式上場後に株主となる人の中には、短期的な株価上昇を狙っている人もいるはずだ。そうした短期思考の投資家から、即効性のある株価上昇策を求められ、ファンド運用が長期思考から転じて短期思考に陥る懸念はないのだろうか。


日本でもしばしば公開企業による「株式の非公開化」が目につくが、そんな際に必ずと言っていいほど登場するのがPEファンドだ。公開会社が、PEファンドの資金によって短期思考の投資家の圧力から解き放たれ、長期的視点に立って更なる成長を目指す、というのが株式非公開化の重要な目的だ。つまり、PEファンド(バイアウトファンド等)は、株式市場よりも長期的な視点に立つことに存在価値があった。そうした、PEファンドが自ら上場して株価変動の波にさらされるとしたら、果たしてPEファンドはこれまでどおり長期的視点に立てるのだろうか?


PEファンドが公募によって資金を調達する際には、こうした短期思考化が懸念されるわけだが、それでも公募に頼らざるを得ないのだとしたら、その理由は何であろうか。


PEファンドを取り巻くマネーの状況が変調してきた、ということだとすると、根が深い。


[コラム] 東証AIMはグロース向き? [コラム]

東証AIMに第1号銘柄上場する見込みだ。栄えある第1号銘柄は、メビオファームという創薬ベンチャー。東証AIMはプロ向け市場として2009年に開設したものの、2年の長きに亘り上場案件がなかった。メビオファームという会社の内容については専門外なので評価できないが、ようやく上場企業が出てきたことを大いに歓迎したい。


とはいうものの、東証AIM開設以来なぜ2年も上場銘柄が出てこなかったか、栄えある1号銘柄のJ-Nomadが日系証券会社でなかったのはなぜか、改めて東証AIMの課題が浮き彫りになったのも事実だろう。


■J-Nomadは責任重くて割に合わない?


東証AIMに上場する企業は、「指定アドバイザー(J-Nomad)」の支援を要する。実績が少なく信用力の弱い企業は、通常は単独での上場など難しいわけだが、そうした企業であっても、指定アドバイザーの力を借りることで上場できる道を作り、新興市場を活性化と、ひいては日本のベンチャーを元気づけようと考えたのであろう。こうした指定アドバイザー制度の仕組みを導入したことは、信用力の低いベンチャーの株式公開に道を開いたという点で高く評価されるべきだ。


しかし、「投資の自己責任原則」を考えると話が込み入ってくる。


指定アドバイザーの支援を受けて上場した企業が、その後上場廃止になったり破綻した場合、その企業に投資した投資家は損害を被ることになる可能性が高いわけだが、そうした損害は果たして100%その投資家の自己責任なのだろうか。それとも「指定アドバイザー」も何らかの責めを負うべきなのだろうか。


株式投資は「自己責任」が原則だ。東証AIMであろうと他の市場であろうと、株式投資した企業が破綻したことでその株主=投資家に損害が発生するとしたら、それは投資家の責任であって他のだれの責任でもない。投資家が適切な投資判断を行い得るよう、情報開示の公正さを担保することが極めて重要なのだが、それが確保されていれば、投資するかどうかを決めるのは投資家自身であり、その結果についても責任がある。投資によって利益が発生すればそれは投資家が享受すべきものだし、損失が出ても同じように投資家はそれを甘受しなければならない。株式会社とはそういうシステムだ。


東証AIMに上場した企業であっても、仮にそれが破綻して投資家に損害が発生するとしたらそれは投資家自身の責任だ。情報開示が正しく行われている限り、指定アドバイザーが何らかの責めを負うべきものではなかろう。


とはいうものの、破綻企業にかかわった指定アドバイザーに対して、日本の投資家はどう反応するであろうか。投資の自己責任論が脇に追いやられ、「破綻するような企業を支援する指定アドバイザーが悪い」というような議論が出てきたりしないか。こうした「紹介者責任」ともいうべき習慣があることで、誰も紹介者になろうとせず、上場のチャンスを得られずにいるベンチャーがあるとしたら不幸なことだ。


東証AIMは日本の証券取引所であるわけで、当然のことながら日本の証券会社の奮起が期待されたであろうが、上記のような紹介者責任を問われるとしたら証券会社も動きづらいことだろう。1号案件の指定アドバイザーが日系証券会社ではなく海外勢であったのは、そんな背景と無縁でないのではなかろうか。


■機関投資家の参加は期待薄?


東証AIMへの上場は、他の市場に比べて成熟度が低い段階でも公開可能であることから、東証AIMでは「プロ投資家」のみの参加を前提にしている。プロ投資家であれば、上記のような紹介者責任に絡む話は無縁だということなのだろう。


そのプロ投資家とは誰なのかと言うと、東証の表現を借りれば、下記の者のようだ。


引用: TOKYO AIMに投資できるのは?

TOKYO AIMは、金融商品取引法の改正により導入されたプロ向け市場制度に基づく市場です。

制度上、TOKYO AIMにおいて直接買付けが可能な投資家は、特定投資家及び非居住者に限られます。一般投資家は取引所に直接買注文を入れることはできず、投資信託等を通じて、市場に参加することとなります。(何らかの理由でTOKYO AIMの上場株式を保有している一般投資家がTOKYO AIMを通じて売却することは可能です。)

特定投資家の定義は、金融商品取引法上、以下のとおりです。

  • 適格機関投資家(金融機関など)
  • 上場会社
  • 資本金5億円以上の株式会社
  • 政府・日本銀行
  • 地方公共団体

「みなし」特定投資家(証券会社への申出、確認が必要)

  • 上記以外の株式会社
  • 3億円以上の金融資産及び純資産を持ち、金融商品について1年以上の取引経験を有する個人

ざっくり言えば、プロ投資家とは、機関投資家や大会社、あるいは証券会社に申出・確認した人のようだ。ちなみに非居住者であれば無条件に取引に参加できるところが面白い。非居住者で東証AIMの株を買うような人はプロしかいまい、ということか、、、


では、本当に東証AIMにプロ投資家は入ってくるであろうか。


日本の既存の新興市場(東証マザーズ、大証ヘラクレス等)の主要プレーヤーは個人投資家のようで、機関投資家の影は薄い。既存新興市場よりもさらに小規模な会社でも公開できる東証AIMにプロ投資家の資金を呼び込むことは可能だろうか?


■グロースファンドの出番では?


東証AIMの位置づけや狙いが何かによるが、それが「既に会計上の業績を実現しており今後も成長を見込める企業」ではなく、「まだ会計上の業績を実現していないが今後の成長を見込める企業」に対して資金調達の道を開いたものだと考えるとわかりやすい。東証AIMは東証1部、2部やマザーズと言った他の市場よりも早い段階での株式公開が可能な市場だということになる。(この考え方が間違っているとしたら、どなたが適切な考え方をご教示ください)


そうした早い段階の企業に投資する投資家は、通常の上場企業への投資とは別の知見が必要になるはずだ。生損保や銀行・証券といったところで上場株に投資している方々のノウハウとは少々違ってくるのではないか。過去の会計情報はあまり役に立たないだろうし、ましてやPERやPBRを見て株価が高いの安いのという世界ではない。


これって、専門性を持ったファンド、たぶんグロースファンドのようなものの出番ではないか?


東証AIMに上場する企業に投資し、何年後かに本則市場に上場する際に売却するような収益モデルが考えられる。日本のVCには資金を持て余しているファンドもありそうだ。あるいは新規分野への参入を考えたいファンドもあろう。そうした諸氏にとって、東証AIM上場企業に投資するファンドというのは一考の価値があるのではないか。東証AIMは「プレIPO」市場だと割り切り、東証AIMに求められるノウハウに長けたプレーヤーの参加を促すという考え方があってもいい。


グロースファンドによる東証AIM活性化、そんな考えはいかがであろうか。


今後のエネルギー政策の行方 [コラム]

東日本大震災は非常に衝撃的だった。テレビで放送される映像が信じれなかった。こんなことが起こっていいのだろうか。人間の英知というのは自然の猛威の前では全く非力なものだ。被災者の方には心よりお見舞いを申し上げたい。


福島原発の状況も気になる。関係者の命がけの行動により、事態は着実に改善の方向に向かっているように見えるが、報道を見る限り、引き続き乗り越えなければならない障害はまだまだありそうだ。危険な環境下で作業をされる方々をどのように応援したらいいかわからないが、一市民としてただひたすら彼らの成功を信じている。


ところで、今回の原発の事故により、世界中で原発の是非に関する議論が沸き起こっているのは皆様ご承知の通りだ。福島の現状を見れば、人類の英知など所詮自然の前では無力なのだから、「原発を止めろ」というのもごもっともな意見だ。しかし、原子力が日本や世界のエネルギー源としてどの程度貢献していたかを踏まえないと、そう単純に割り切れるものでもない。


資源エネルギー庁のエネルギー白書によると、日本の1次エネルギーに占める原子力の割合は10%程のようだ。新エネルギー・地熱も3%ぐらいあるという。


引用: エネルギー白書2010 (資源エネルギー庁)

(前略 )一次エネルギー国内供給に占める石油の割合は、2008年度には、41.9%と第一次オイルショック時(75.5%)から大幅に改善され、その代替として、石炭(22.8%)、天然ガス(18.6%)、原子力(10.4%)の割合が増加する等、エネルギー源の多様化が図られています。

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上記は日本の「エネルギー」の供給源全体の話だが、電力に限ってみると原子力の貢献度は大きくて、3割くらいにも上る。


引用: 日本の発電電力の構成について (資源エネルギー庁)

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日本の全発電量の3割に上る原子力を廃止しようと思ったら、これに代わる発電手段を見つけるか、あるいは電力量を3割減らしても経済水準を維持できる社会構造・産業構造を作るかしかない


手っ取り早いのは火力発電の割合を増やすことだと思われるが、CO2削減の議論があるなかで石油や石炭を燃やす火力発電を増やすことは、地球温暖化の観点からは大いに問題だ。


ベンチャーの立場からすれば、太陽電池、風力発電など、既存のエネルギーを代替する新たなエネルギーのニーズが高まることは間違いなかろう。しかし、そうした新エネルギーの発電コストはまだまだ高く、現在の技術水準の延長では全発電力の3割を代替するなどと言うのはありえない。何か画期的なブレークスルーが必要だ。資金人材など多くの資源を投入する必要があろう。


原子力発電をどうするか、容易には答えを見いだせそうにない。しかし東日本大震災が起きたことで、非常に大きな転換が起こるかも知れない。この未曽有の危機を乗り越え、エネルギーの新たな枠組みをいち早く実現し、日本の国力アップにつなげたいものだ。


公開企業と未公開企業の本質的な違い [コラム]

公開企業と未公開企業の本質的な違いは何であろうか。それは、発行会社と株主との間の「情報の非対称性」が大きいか少ないか、ということなのかも知れない。


公開企業は、だれでも株式を購入できることが前提となっており、これを実現するために各種制度、たとえば会計基準が決められ、情報開示が義務付けられており、、そうした開示情報を理解したうえで誰でも(安心して)株式を売買出来るようなシステムになっているわけだ。


しかし、公開企業がIRでどれだけ細かく情報を開示したとしても、発行会社の情報をすべて開示しつくすことは出来ない。たとえば、営業の現場でどのようなことが起きているか、会社の内部にいる人(インサイダー)にはわかっているが、外にいる人(アウトサイダー)にそれらのすべてが開示されるわけでもなく、情報量に差ができてしまい、情報が非対称にならざるを得ない。だからこそ、インサイダーの株式売買は厳しく規制される。アウトサイダーは、開示される情報を元に株を買ったり売ったりするわけだが、開示情報に載っていないことは知る由もない。


一方の未公開企業は、極論すれば株主も経営陣も含めて関係者はすべてインサイダーであり、株主と経営陣との間の情報の非対称性は少ない。株主と経営者は関係が深いことが多く、特に急成長を目指すベンチャー企業では株主が積極的に経営にかかわって支援することがしばしば行われたりしており、株主と経営が部分的に同一なものと見ることが出来る。「インサイダー」というと、なんだかイメージが良くないが、難しい市場環境の中で事業を拡大させるには、株主も経営陣も一体となって総力戦で経営にあたる方が機動的に動けるものだ。


公開企業には、資金調達しやすいとか、社会的な信用がアップするとか、取引がしやすくなるとか、いろいろとメリットもある。しかし、昨今の日本の株式市場の低迷には、「日本の会社が成長するように見えない」という漠然としたイメージがあるのではないか。いくらIRで示したところで、ビジネスの現場で行われていることは伝えきれない。公開企業であるよりも未公開企業である方が機動的な経営が出来る場合もあるかも知れない。


日経ビジネスの最新号で「新興市場は壊死寸前」なんて書かれているが、場合によっては非公開化を伴う再出発のような話が増えるのが必然なのかもしれない。


コラム: 日本は情報発信しよう [コラム]

先ごろ東京ビックサイトで開催された国内最大級の環境系カンファレンスであるPV Expo, FC Expo,二次電池展に参加してきた。このカンファレンスには数年来参加しているが、今年は会場も広くなり来場者数も飛躍的に伸びた感じだ。大いに盛り上がったと言っていいだろう。 



こうした大きなカンファレンスだっただけに海外からの来場者も多かった。会場のあちこちで欧米系、アジア系の人を見かけた。いい傾向だ。



そんな中、主催者が来場の主だった人を招待して「VIPランチパーティ」なるものを開催してくれた。日本の環境系の人が集まる交流会というのは初めてだったので、期待して行ってみた。しかし結果は悪い意味で驚きだった。300人ほどの業界関係者が集まる立食パーティだったが、大半の人が会場内でただ黙々と食事をしているのである。食事を取りに行くための行列も長く、みんなおとなしくその行列に並んでいる。300人もいるのに、とても静かなのだ。名刺交換なんて雰囲気じゃない。みんなあまりしゃべっていない。。。。海外からの人たちもこれには呆然という感じで立ちすくしていた。



日本でIT系の集まりに参加しても食事に一生懸命な人は見かけるものだが、もう少し交流会の側面があることが多い。業種が違うと雰囲気が違うということか。。。



日本の環境系技術は高いというが、コミュニケーションの方法には非常に戸惑いを感じる。下記のような記事もあるが、ぜひとも積極的にコミュニケーション&情報発信していかねばなるまい。

引用: クリーンテックに流れ込むカネと「ジャパン・パッシング」

日本企業は米国では存在感が薄い。それどころか、クリーンテック分野で「日本外し」が始まったと感じている人は少なくない。理由は大きく分けて2つある。1つは海外での競争力が弱いことだ。民間の分野では日本企業のアピールが非常に弱い。外交も及び腰であると感じる。










提言: 年金基金をベンチャーファンドへ [コラム]

ベンチャーキャピタルを取り巻く環境は昨年の秋ぐらいから投資マインドが改善してきている気がするが、一方でまだまだ過去の柵にとらわれて動きが取れないところも少なくない。いち早く景気回復した中国や韓国、台湾と比べても日本が足りない。何か抜本的な枠組みの変更が必要だ。

アメリカではVC業界発展の背景に、エリサ法(ERISA : Employee Retirement Income Security Act 1974、従業員退職年金保障法)の果たした役割が大きいといわれる。たとえば下記のページから引用しよう。

引用: VCF出資者としての年金基金
米国のベンチャーキャピタル投資の発展史を眺めてみると、1981年にERISA(従業員退職年金保障法)による年金基金の運用規制緩和で、年金基金のベンチャーキャピタル・ファンド(VCF)への投資が解禁されたことの意味は大きい。ERISAの規制緩和は、当時のキャピタルゲイン課税の引下げやPCなど新しい技術革新の進展と相俟って、1980年代以降の米国VCFの規模拡大に貢献し、結果としてVC投資の意義への社会的認識も大いに進んだ。同時に、その後の米国VCFの主たる出資者は年金基金となり、最近でも米国VCFの約半分は年金基金が出資している。

エリサ法については日本では語られることはほとんどないが、年金基金が危機に瀕していた80年代のアメリカにおいてエリサ法が出来たのは興味深い。その背景や意義を理解することは重要だ。私自身、きちんと研究しているわけではないが、VCとしての視点では下記のような影響があったと聞いたことがある。

  1. ERISA法により、年金基金はVCファンドに出資するよう促された(噂では、P・F・ドラッカーがベンチャー育成が国家経済の将来に有効であることを説いて議会を動かして法制化され、年金基金はVCファンドに投資せざるをえなくなったという)。
  2. その後、80年代にIT系を中心に多くのベンチャー企業が誕生し、成長した。70年代のものも含めればAppleMicrosoft、Sun、Ciscoなど国の経済を支える原動力となる企業が生まれた。
  3. その後も年金基金はVCファンドに出資する主たる投資家となり、バイオやクリーンテックなど次々に新しい分野での産業革新を起こす原動力になっている。

日本の国民年金、厚生年金も危機的状況だと聞いているが、金利の低い日本の国債やぱっとしない上場株式で運用していてもたかが知れている。思い切って年基金の一部(たとえ1%でも十分!)をベンチャー投資に回すような法律などできないものだろうか。

もちろん、今の日本の業界体制では不安だ。起業家、支援者、情報開示の在り方、失敗した場合の在り方など、あらゆるところでレベルアップが求められよう。しかし、明日の日本を担うベンチャーが本当に出てくるとしたら魅力的だ。

日本の閉塞感を打破するため、みんなで世論を盛り上げませんか?

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ベンチャーの累損は「悪」か [コラム]

日本と欧米のベンチャー業界にはいろいろと考え方の違いがあるのだが、その一つに「累損」がある。日本のベンチャー関係者の間では、累損に対するイメージは海外以上に悪いような感じがする。

「累損(累積損失)」は、損失が何年か続いた会社において、それら損失が積み上がったものとして貸借対照表の資本の部の一番下あたりに出てくる数字のこと。黒字続きの会社は黒字が剰余金としてたまり、貸借対照表の「資本の部」は「資本金(含む資本準備金)」より大きくなるわけだが、赤字続きとなるとこの剰余金がどんどん減り、ついにはマイナスとなりその結果「資本の部」は「資本金(含む資本準備金)」よりも小さくなる。積み上がった損失によって資本金が棄損しているわけだ。会計学的に言えば、株主が出資した資本金が目減りしている状態だ。

創業まもないベンチャー、それも研究開発型のベンチャーにおいては、本格的な売上が実現されるよりも前に研究開発に注力する期間が長いことが多く、当然のように累損が発生する。そうした損失はもちろん少ないほうがいいわけだが、そうした研究開発活動は未来の大きな売上をもたらすものとして必要なものであり、累損が発生すること自体はやむを得ないものだと考えられる。

一方、初年度から売上を上げて黒字を積み上げていくタイプの会社もある。研究開発活動を伴わないサービス型のベンチャーに顕著だ。こうしたベンチャーの場合にはそれほど大きな設備投資や研究開発投資を行わずに事業を行うことが多い。累損もそれ程大きくないことが多い気がする。

欧米ではベンチャー企業と言えば前者の研究開発型のベンチャーが多く、一方の日本では比較的サービス型に近いベンチャーが多いような感じがしており、そのあたりが累損に対するベンチャー関係者の考え方の彼我の違いになっていそうだ。

考え方が違うこと自体は問題ないが、この考え方の違いが日本における研究開発型ベンチャーへの逆風をもたらす背景の一つになるとしたら問題だ。研究開発型、サービス型といった事業特性の違いを考慮せず、一律に「累損は悪」としていないだろうか。サービス型のベンチャーに対して「累損は要注意」とする投資関係者や金融関係者は少なくないような気がするが、研究開発型のベンチャーに対しても同じ基準で「累損は要注意」としていないだろうか?

もちろん赤字は少ないほうがいいし、累損も少ないほうがいい。しかし、大きなビジネスをしようと思ったらある程度の投資が必要。要は現在までの累損と将来の利益のバランスの問題で、それらを総合的に考えないと、「累損は悪」とは言えないはずだ。

ベンチャー関係者たるもの、短期的な財務諸表にとらわれず大きな視点で考えたいものだ。


[コラム] ベンチャー創業者の持株比率は如何にあるべきか [コラム]



株式会社においては所有と経営が分離されている。例えば、証券取引所に上場されている株式を購入すれば誰でも上場企業の株主になることができるが、その上場企業の経営は、株主から選任された取締役が行うことになっており、株を買った人が経営するわけではない。これが「所有と経営の分離」だ。(さらに詳しいことを知りたい方はこちらがよくまとまっている)



この所有と経営の分離において重要なことは、株主は経営に関与しない代わりに、取締役を選任する権利を持つということだ。この権利を株主が持つために、取締役は常に株主の信任を得ようと努力するよう動機付けられる。これが株式会社のコーポレートガバナンスの根幹を成す原理だ。



ところが、所有と経営が明確に分離され、きちんとコーポレートガバナンスが効く場合ばかりではない。



上場企業であれば所有と経営が分離されていることが多い(もっとも、創業者が多くの持株を保有し続けていたり、取締役がストックオプションを通じて株式を保有するなど、かならずしも所有と経営が明確に分かれていないところもある)。これに対して、ベンチャー企業などの未公開企業では所有と経営が明確に分離してないことが多い。つまり、大株主がそのまま経営に当たっている例が多いということだ。



ベンチャーであればある意味当たり前なのだが、所有と経営が分離してないということは、メリットになる面もあるが、デメリットもありえるので、そのあたりをきちんと理解しておくことが重要だろう。その辺りを考えてみたい。



ベンチャー企業の株式の形態は、大きく言えば下記のように分類することができよう。



  1. オーナー経営者型: 創業経営者が単独で過半数の株式を所有
  2. 共同経営者型: 経営陣数人が共同で過半数の株式を所有
  3. 大企業子会社型: 親会社が過半数の株式を所有
  4. 投資家支配型: VC等の投資家が過半数の株式を所有


1.は創業経営者が過半数の株式を所有することで取締役選任権などの人事権や業務執行権をすべて支配できる型の会社のことを言う。いわゆる「オーナー企業」。



こういう会社では、事業の成否や会社の成長はオーナーの力量に大きく依存する。オーナー経営者の力量がすばらしければ、迅速な意思決定を通じて効率的な経営が可能となるだろう。実際、そうしたカリスマ型の素晴らしい経営者の力量によって急成長を遂げた会社は世の中にいくつも存在する。



しかし、オーナー経営者に問題がある場合は困りものだ。オーナーである創業経営者には誰も逆らえない。取締役や社員がオーナー経営者に逆らったら首になったり窓際に送られたりする可能性があるからだ。だから、オーナーに問題があると感じた者は、オーナーに対してそれを積極的に指摘するよりは、しばしば自らが退職することで消極的に反抗するしか道がなくなってしまう。そういう会社は、大人しい人だけが会社に残ることで一見静かで平和に見える会社が覇気がない会社が多いような気がしている。



VCの立場でもしばしばこの型の会社に接することがあるが、この型の場合にはオーナーの経営者としての力量を如何に見積もるかが投資判断の重要なポイントとなる。



2.の型もしばしば見かける。2~3人ぐらいの創業者達が株を分け合い協力して経営に当たっている例だ。古くはホンダソニーもこの形だ。IPOする企業の株主構成などを見ていても、この例が少なからず存在するのがわかる。1に比べて経営にブレが少なく、比較的安定しやすいようなイメージを持っている。



3.は日本独特なシステムだが、少なくない。某大手ネット系企業の子会社とか、メディア系企業の子会社とか、多くの企業からベンチャー子会社が出てきている。優秀な人材が大企業にいることの多い日本の状況を考えると、この型も現実的な解だと感じている。



4.は欧米の技術開発型ベンチャーではほとんどの場合これに該当するが、日本ではあまり多くない。これは、VCの比率が高すぎるとベンチャー企業が株式公開した後で市場売却しにくくなるから敬遠される、と説明されることが多いようだ。しかし、世界に通じるベンチャーを育てようと思ったら、多くの資本金を投入して大規模な開発を行うような例も必要になるはず。個人的には日本でもこうした型を増えるべきだと考えている。



◇◇◇◇◇



さて、標記の「ベンチャー創業者の持株比率は如何にあるべきか」だが、これにはもちろん正解は無く、きちんとしたデータもないので感覚的な結論になってしまっていて申し訳ないのだが、個人的には多くの場合において2.の型が最も安定感があるのではないかと考えている(どなたか、そのあたりのデータがあったら是非コメントなりトラックバックなりで教えて頂きたい)。



もっとも、ベンチャー経営者の方に言わせれば、意図して型を決めたわけではなく、それぞれが置かれた固有の事情から結果的にそうなってしまった、ということが多いのだろうが、、、



創業は1人よりも2~3人で、ということをお勧めしたい。


談合社会の崩壊 [コラム]

大学の同窓会から会員名簿が送られてきた。しげしげと眺めていると、同年代の異動が多いのに気がつく。転勤、引越、出向、転籍、転職、いろいろだ。



そんな中、日本の大手ゼネコンで構造設計を行っていた先輩が会社を辞め、まったく畑違いのフィナンシャルアドバイザーに転じているのに目が留まった。保守的なイメージの強いゼネコン業界から転職があるというのに驚くが、その方は優秀な方で、その大手ゼネコンの設計部を支える有力な人材と目されていたこともさらに驚きだ。背景には公共事業削減による建設業界全体の縮小、あるいは姉歯建築偽装問題による規制強化で仕事がしにくい、といったものがあるのかも知れない。何とも残念な話だが、この問題、先輩の転職というような単純な問題では済まないような気がする。



ゼネコンを頂点とする建設業界では(本当の頂点は国交省かもしれないが)、ゼネコンの下に、下請け、孫請け、曾孫請け、、、という業界構造になっており、お互いが仕事の料金やサービス内容について予め申し合わせ、共存共栄してきたのだというように理解している。そういう社会では「秩序」こそが重要であり、その秩序を維持するために「談合」は必要なプロセスだったと理解している。



しかし、予算削減で公共事業が減り、規制強化でビル建設が落ち込んでいる今、秩序とか何とか言っている場合ではなくなってきたのかも知れない。建設・土木業界は首都圏以上に地方において地域経済に与える影響が大きい。一部地方の建設業界では、激烈な競争が起こっている地域もあるとか。建設業界の凋落は地域経済の停滞をもたらす可能性もある。日本経済に大きな地殻変動が起きているのではないか。



ところで、こうしたゼネコン業界の凋落を見ていて、ふと気になるのが「システム受託開発業界」だ。80年代から90年代にかけて、大手企業や官公庁が多額の情報投資を行ってきた関係で潤った業界だ。金融機関等でしばしば数百人を動員するようなシステム開発プロジェクトが行われてきたが、こうしたプロジェクトには必ず受託開発を行う中小ベンダーが動員されてきた。NTTデータやその他大手SI企業を頂点とし、細切れにされたサブシステムの開発を多数の受託開発業者が請け負って底辺を支えてきたわけだ。



しかし、中国・インド等でのオフショア開発の広がりや、パッケージソフトが高機能化したこともあるのだろうか、ここ数年は業界全体に勢いが無いように見える。



市場全体のパイが縮小しているとしたら、業界内で淘汰が起こるのは必至。そうだとしたら、これら企業は受託開発が残っている違う市場を見出すか、他の事業(ソフトウェア開発業等)に転換を迫られる企業が少なくないのではないか。



つらい話だが、ポジティブに捉えれば、日本のSI業界が変化してWeb業界やソフトウェア業界に人材が投入されうるという事かもしれず、そうした新しい業界の発展という意味では悪くないのではないか。



建設業界にしてもSI業界にしても、環境変化に対応できた者だけが生き残るという事かもしれない。


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