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[VC投資論9] VCの功罪 [VC投資論]

VC投資論の9回目はVBの目から見たVCの功罪について見ていたい。VCから投資資金を得ることがどういう意味を持つのか、そのあたりを整理した。





まずは、「功」から挙げてみよう。



  1. 成長資金を得られる
    VCに投資してもらうことのメリットの第一は、何といってもこれだろう。成長するベンチャー企業に投資するのがVCの仕事だ。担保は無くとも成長できる見込みが十分あればVCから資金を提供してもらえる。使いようによっては魅力的だろう。
  2. スピードアップ
    VCからの出資によってVBは経営資源に余裕ができ、人件費などに積極的に投資することが可能となる。その結果、VC資金に頼らずにいる場合よりも一気にすばやく成長できる可能性が高まる。
  3. 公開企業になるチャンス増える
    VC資金を活用することで、高い成長を実現しやすくなり、株式公開できる大きさまで成長出来る可能性が増える。VC資金に頼らずとも大きく成長して公開企業になることも可能であろうが、要は程度の問題で、VC資金を使った方が成長力を高め、資金繰りに余計な苦労をすることも減ると言えるのではないか。
  4. 助言を得られる
    VCは公開を目指すVBに数多く接しているため経験豊富で、様々な業界の人(弁護士、証券会社、他投資家)との人脈も豊富だ。そうした情報を持つ人が株主になることで、経営上の問題を解消する有益な助言を期待できよう。


次に、「罪」の側面を見てみよう。



  1. 成長スピードを出さないとならない
    VCは成長性を見込んでVBに投資する。成長性を見込めなかったらVCは投資しない(その場合、VC以外からの資金調達を考えるべきだ)。ちなみに株式公開した後でさえ、投資家はVBの成長を見込んで株を買う。成長しえないのであれば売り浴びせられるから新興市場へは行かない方がいいだろう。VBに投資するVCや投資家はそのVBの成長を期待しており、殊にVCはこれを実現するようVBに圧力をかけるだろう。圧力の強さは概ねVCの持株比率に比例するもので、VC比率が高い程、成長へのプレッシャーも強い。米国のVBではVCの持ち株比率が過半数を超えることも多いので、プレッシャーはむちゃくちゃ強い。VCの期待をそこねると、VB経営者は首になることも覚悟しなければならない。このように、VCから資金を受けたり、株式公開して投資家の資金を受けるということは、見返りとして成長スピードというプレッシャーを受けることを覚えておくべきだ。
  2. コミットメント
    上記に関連するが、VCや投資家はVBに対して将来をコミットするよう求める。今年度の業績は○○億円、来年度は○○億円、というように、具体的な数字によるコミットメントを求めらる。
  3. IR、レポーティング、説明責任
    コミットした事業計画に対して実績がどうか、VBはVCに対して説明する義務を負う。計画どおりに行かなかったら大変だ。VCが納得しなかったら信任は得られない。信任を得られないと、例えば将来資金が必要になったとき、追加の資金を出してもらいにくくなる。
  4. 出口
    VCは投資の「出口」を求める。VBはIPOかM&Aによる売却の機会をVCに提供しなければならない。成長しないまま、ずっと同じ規模に安住していることVCは許さない。
  5. 経営権確保の問題
    VCなど外部の投資家の持ち株比率が高まると経営権に影響してくる。VCが過半数の株を持つようになると大変だ。持ち株比率は慎重に設計しなければならないだろう。
  6. 助言を得られるとは限らない
    VCの出資を受けたからといって経営に必要な助言を得られるとは限らない。VCも人の子。経験や人脈に個人差はあるし、得手不得手もある。いい担当者にめぐり合えればラッキーだが、そうでもないこともあると言う。


このようにVCからの資金を受けるということは功と罪の両面がある。それらを十分わかった上で、じっくりとVCと付き合おう。


[VC投資論8] 日本の常識と海外の常識 [VC投資論]



もう2ヶ月近くもご無沙汰してしまったが、久しぶりにVC投資論を復活してみたい。今回は日本と海外(特にアメリカ)のVC環境の違いについて書いてみたいと思う。このブログの中でもしばしば取り扱ってきたテーマだが、今日はこれを総括してみたいと思う。

参考: 関連する過去のエントリー

日米VCの違い:普通株と優先株

日米VCの違い:バリュエーション

日米VCの違い:EXIT

融資のご利用は計画的に

ベンチャー企業の赤字は悪か



日米のVCを取り巻く状況を比較すると下記のように整理できる。話を単純にするため、ステレオタイプ的に大胆に簡素化しているので、これにそぐわない例も多々あることをご承知の上で見て頂きたい。















日本

アメリカ

VBのスコープの大きさ

日本市場のみを対象

世界市場を対象

VBの志向

どちらかと言えば安全志向(失敗するわけにいかに)

成長志向(失敗してもまた始めればいい)

VBの財務的な特徴

成長率よりも黒字化重視

黒字化よりも成長率重視

一般的な資本金のレベル

数千万円~数億円程度

数千万円~数十億円

創業者の持株比率

概ね過半数を維持

しばしば20%以下

VCの持株比率

2030%以下を好む

80%ぐらいまで

経営権

創業者支配

VC支配

出口手法

多くの場合IPO

M&A主流(8割)。IPOの場合はブロックトレードによってVC持分を売却。

IPO時の平均バリュエーション

50100億円ぐらい(日本は公開しやすい!)

平均300億円ぐらい

融資、保証

開発資金に活用する場合も多い。経営者の個人保証多し。

通常は融資を受けない。レーターステージにおいて運転資金に使うのみ。

公開された投資情報

ほとんど未整備

第三者的な情報機関あり(Venture Source, Thomson)

出口における特有の事情

引受証券会社、上場市場の裁量権が強い

M&Aを仲介する投資銀行の裁量権が強い

ファイナンス手法

主に普通株による調達

主に優先株、転換社債による調達

シンジケーション

リード役が明確でないこともしばしば

リード役が明確。必ずタームシートを作成。



こうして見ると、実に多くの点が相違している。大雑把に言うと、日本の方がコンサバで安全志向だが失敗も少ない感じ、対するアメリカはダイナミックに挑戦し駄目ならさっさと次に行く、というように感じている。



どちらが良いとか悪いとかいった議論はあまり意味がなかろう。日米それぞれの市場環境においてVBもVCもそれぞれのやり方で活動し、成功事例を作り、収益を上げてきたということが重要だ。上記の相違点は、それぞれの市場環境の違いやプレーヤーの違いを背景に生じてきたものだと理解している。



ただ、日本の今後を考えたときいくつか気になる点がある。



  • 少子高齢化により今後日本の経済規模は安定から縮小に向かうかもしれない。
  • 世界における日本の注目度は低下の一途。アメリカ人の間で中国やインドは盛んに話題に上るが、日本が話題になることは少ない。


世界に名を馳せた日本の大企業は今後もその地位を維持していけると思うが、足元を見れば「ものづくり日本」の後を中国やインドが迫ってきており、相対的な地位低下が避けられなかろう。国力を維持するためにはどうしても新しい産業を作る必要があると思う。



かつて日本からソニーやホンダが生まれたように、新しい産業を作る上でベンチャーはとても重要な存在だと考えている。世界に通用するベンチャーを作ろうという強い意志と、それを支える環境が必要だろう。80年代に不況を経験したアメリカでは、大学が中心になってベンチャーの卵を生み、これにVCが出資することで大きく育ててきた。決して平坦な道のりではなかったはずだ。



今まで日本企業の強みは「長期的」な視点や考え方であったはずだ。今後の日本に必要なのは困難があろうとも大きな目標にチャレンジし、「長期的」な成功を勝ち取ることだと考えている。


成功ベンチャーに投資しなかったVCの話 [VC投資論]

大成功する企業と言えども、必ずしも双葉より芳しいわけではない。SNSで有名なFacebookは創業期に地元の有力VCから出資を断られていた。



Facebookの創業者であるMark ZuckerbergらHarvard大学の学生は、創業資金を得るために地元ボストンの郊外に拠点を構える著名VCのBattery Venturesに投資の相談をしたが、Batteryからは断わられてしまっていた。最初の資金調達に失敗したわけだ。しかし、Facebookはその後も大きく成長し、昨年はYahooらと10億ドル(約1120億円)での買収の可能性が取りざたされたされるまでになった。この買収話は結局Facebookがこれを却下してベンチャーの道を続けることになり、2007年は売上高1.5億ドル(約160億円)、時価総額に至っては100億ドル(1.1兆円)という強気な発言が出るくらいまで成長した(出典)。創業期の投資を却下したBatteryは大きな魚を逃してしまったわけだ。



大成功(しつつある)Facebookへの投資をなぜBatteryは断ったか、その顛末がWeb上で公開されている。参考になるので原文を丁寧に読んでみるのをお勧めする。一部抜粋で紹介しよう。

Why Facebook went west

... Zuckerberg said he thought Facebook was worth about $15 million, and was willing to accept an investment ranging from $1 million to $3 million, which would have given Battery a substantial chunk of the start-up.

But Battery had already made an investment in an earlier social networking site, Friendster, which was foundering. Zuckerberg struck some partners at the firm as a little too brash. And no one was sure whether Facebook would appeal to anyone oth er than college students, its target.

時は2004年4月、Facebookは創業に必要な資金の出資者を探していた。創業者のZuckerbergは地元VCの雄、Battery Ventureのシニア・アソシエイトと接触しており、時価総額US$15百万ドル(約17億円)でUS$1~3百万ドルの出資をBatteryから受けたいと考えていたようだ。



しかし、Batteryは悩んだ。当時Batteryは既に他のSNSベンチャーに投資しており、この上さらに同じ業界のベンチャーに投資するのには躊躇したのだろう。また、Batteryのパートナーの目には創業者がやや短気だと写ったようだ。Facebookが学生以外のユーザを受け入れられるかどうかも疑問に感じたようだ。

There were also turf issues with Battery's Silicon Valley office, which had invested in Friendster. "There was a question about whether we on the East Coast side were going to lead an investment with a sophomore in college who was considering a move to the West," says the senior associate.

さらに、Batteryは西海岸に行こうとしているベンチャー企業を東海岸のVCであるBatteryがリードできるかどうか自問したようだ。このあたりは東海岸らしい保守性が出ているように感じる。



これらの要因が重なり、Batteryはこの投資案件を却下したようだ。



その後、Facebookは西海岸で出資を受けることになるが、その顛末も紹介されている。

Through a chance connection, Zuckerberg was introduced to Peter Thiel, a cofounder of the online payment system PayPal, who was running a hedge fund called Clarium Capital. He met with Thiel in August, at Thiel's office in downtown San Francisco.

Thiel had also been an investor in Friendster, and he knew that the conventional wisdom was that all the social networking sites "were just fads that would come and go," he says. Thiel listened to Zuckerberg's pitch in the morning, asked him to go out and grab lunch, and by the time Zuckerberg returned in the afternoon, "we said we'd invest, and we agreed to the basic valuation parameters," Thiel says.

"It seemed like a good company," he said, adding, "Most of the time, we're not that fast."

Thiel put in $500,000 of his own money in return for 10 percent of the company.

Facebook創業者らは、西海岸に引っ越した後、人脈をたどり、PayPalの創業者で当時はヘッジファンドを運用していたPeter Thielと出会う。Thielは「いい会社だと思った」といい、即座に50万ドル投資して10%の株主となった。創業者らと午前中にミーティングし、そのままランチに一緒に出かけて、その場で投資を約束したという(やや誇張もあるのではないかと思うが、、、)



こうしてFacebookは創業資金を獲得し、その後著名VCのAccel Partnersからも出資を受けて今日に至る。そのAccelもこう言っている。

"Facebook was perhaps the most controversial deal we've done in several years," says Jim Breyer of Accel Partners. "Some of my best friends in the business were wondering why we'd write a check to a company that had very little defensibility to their business." Indeed, anyone could potentially build a better site and lure Facebook's users away.

つまり、AccelにとってもFacebookへの投資判断は難しかったようだ。Batteryだけが能力が無かったというわけではないのだろう。



このように、新しい分野を切り開くベンチャーについては、誰もが常にポジティブに評価出来るわけではない。VCも間違うことはある(多い)。だから、起業家の方は多くのVCに会って見るのがいいだろう。VCの会社や人によって方針がちょっとずつ違うのが判ると思う。



この話を踏まえたVCへの教訓は、VCはバランスが重要だということではないか。合理・理性で判断できるところと、もう少し感覚的で直感的なところの微妙なバランス。どちらか片方が不用意に強すぎてはうまくいかない。VCに求められるのはそうしたバランス感覚なのではないかと考えている。


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[VC投資論7] 出口について [VC投資論]

すっかりご無沙汰してしまったが「VC投資論」を再開したい。今回は「出口」について。



「出口」というのは、VCなどの投資家が投資した資金を回収するイベントのことを指す。VCが投資する企業は一般に未公開企業なのだが、未公開企業の株式はそのままではほとんど売買する場所がないので、VCはその株式が将来的に「売買可能な状態」になっていくことを期待するわけだ。具体的には、①株式公開②M&Aによって大手企業等に買収される場合などがそれにあたる。
この出口という言葉はVCの都合から出てきた言葉、VCの視点でしか物事を見ていない言葉であり、投資を受ける企業の側からしたらちょっと顔をしかめたくなるような言葉でもあるが、VCが金融商品を取り扱う業者である以上、概念としてこういう言葉が存在するのはやむを得ない。それを理解した上でVCとうまく渡り合う道を探るべきだろう。



さて、①株式公開については日本の読者の皆さんも馴染みが深いと思うので、株式公開そのものについてはここでは説明を省く。重要なことは、日本のVC業界にとっては株式公開がほとんど唯一無二の出口の手段であったことだ。IPO市場の動向がVCの業績に直結する構造になっている。しかしながら、最近の日本の新興市場株式について下記のようなことが指摘されている。



  • 新興市場全体が低迷しており盛り上がっていない。一世を風靡したベンチャー企業の多くが業績の伸び悩みに直面し、投資家が失望して株価が低迷する例が頻発している。
  • 2005年までは株式公開による公募株式への投資は必ず儲かる投資だったが、上記のような市場環境を受けて最近はそうとも言えず、IPO後の株価が公募価格を下回ることもしばしば起こっている。またIPOの件数が昨年を下回って推移しており、低調の感を拭えない。


つまり、最近はVCにとっては苦しい状況になってきているわけだ。



こうした状況を打開するため、どんな打ち手を考えることが出来るだろうか。こうした状況になった原因は、つまるところベンチャー企業が投資家(個人投資家、機関投資家等)から信用されなくなってきたということだと考えられるが、そうだとすれば、この状況を脱するには投資家からの信用を回復することが必要だ。そのために、ベンチャー企業は



  • 株式公開をゴールとせず、株式公開後も大いなる成長を目指し、着実に達成する




ということに尽きるのではないか。



日本の新興市場では年商10億円ぐらいあれば株式公開できてしまうようで、これは米国その他の諸外国比較してもかなり低い水準であり、言い換えれば日本はとても株式公開しやすい国なのだが、その株式公開のしやすさが裏目に出ている気がする。株式公開後も事業を飛躍的に拡大して、例えば年商50億円、出来れば年商100億円以上のビジネスを目指し、これを実行していけるようであれば公開株式に投資する投資家も安心するというものだ。現実は決して楽ではないが、起業家、VC等関係者が一丸となって対処すべき時期に来ていると考える。



次に②M&Aについてだが、日本もM&A件数は増加傾向にあって2005年に2,800件程あったようだ(出典)。明細を示すデータが手元に無いので不詳だが、残念ながらこれらの大半はVCが絡んでいるわけではなさそうだと感じている。私の身の回りではM&Aによってベンチャー投資の出口を実現した例はそれほど多くなくて、想像では団塊世代の大量定年時代を向かえ、後継者不足に悩む中小企業による事業承継目的のM&A等が多いのではないか。



ベンチャーが関連するM&Aが増えるにはどんな要因が必要だろうか。私は世界的なレベルで活躍する日系大企業と日本のベンチャー企業との関係がもっと深まらないものかと期待している。



世界的に活躍する日系大企業は「自前主義」の会社が多いように思う。完成品としての商品だけでなく、それを構成する部品や材料まで自社や系列企業で開発したり、場合によっては販売まで自前で行う。自動車、電機がこの典型だし、どちらかと言えば閉鎖的で階層的な構造になっている通信業界等にもこの傾向がある。これらの企業・企業グループの中核には必ず「中央研究所」があって、ここであらゆる分野の基礎研究を行い、次世代の技術を開発しているわけだ。



市場動向が「予測可能」であればこの形はとても効率的だ。同じグループに属する顔見知り同士が、効率的に「すり合わせ」しながら、高機能・高品質な商品を短期間で開発することが出来よう。日本の自動車や電機メーカーの強さの源泉はこの自前主義であったと考えている。しかし、市場が予測困難になればどうだろう。市場が自らの想定外の方向へ想定外のスピードで行ってしまう。大企業グループは何しろ関係者が多いので、そうした予想外のことには身軽には追随しにくい。つまり時代が予想外の方向で展開していく時代にあっては、このモデルが万能だとは言えなくなってくるのではないか。



そこで提案したいのが、大企業とベンチャー企業のコラボレーションだ。予測が難しい未来に挑戦するのがベンチャーの本質であり、そうして成功してきたベンチャーを大企業に取り込む動きがもっとあってもいいのではないか。Google, Yahoo, Intel, Cisco、、、等、米国を代表するハイテク企業はみなこのパターンで、自社で強力な中央研究所を持たずに、代わりに成功しつつあるベンチャー企業を買収することで新たな技術や市場を取り込んでいる。IBMのように、自らが興味ある分野をVC等にささやき、その分野での起業意欲を高める活動をしているところまである。こうした米国型のモデルを取り込み、日本の優良ベンチャーを日系大手企業が買収することで、双方がハッピィになれるような場面があってもいいと考える。



あるいは逆に、大企業内ではリスクが大きくて資金を投入できないプロジェクトに外部リソースを使用するという考え方もあってもいい。欧米ではこの手のスピン・オフ、スピン・アウト企業が実に多い。親元企業との連携を確保するカーブ・アウトも面白い。あまり日本では流行っていないが、VCはじめどこの投資家も金余りで投資先を探っている現在の状況下では、こうしただぶつき気味の資金をうまく使ってビジネスを創造していくという考え方があってもいいと考えている。


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[VC投資論6] 種類株について [VC投資論]

VC投資の世界では、しばしば株券の種類が問題になる。増資の際、普通株と種類株のどちらを使うべきか、きちんと整理して考えなければならない。



海外のVC投資の世界では圧倒的に優先株が使われており、普通株が出てくることはほとんどない。日本ではまだ優先株は少数派のようだが、着実に裾野は広がっているようなので、どのような優先権を付与すべきかノウハウが蓄積されて相場が形成されていくことであろう。



海外VC投資で優先株が使われる理由は何だろう。起源については詳しくないが、90年代後半には海外でもまだ普通株による投資が行われていたようであり、2000年のバブル崩壊に全面的に優先株に切り替わってきているような気がする。実際、バブルが崩壊して投資したVBが次々に苦境に立たされる中で、VC側も自らの権利を守らなければならず、そんなところから優先株の権利について様々な研究や実践がなされてきたのではなかろうか。日本のVB市場も少々スランプ気味なので、こうした状況下では優先株などを使ったファイナス手法の研究が進むことになるかもしれない。



さて、海外VC投資の世界で使われる優先株は一般に下記のような機能を持つ。



  1. 残余財産の優先分配権(投資額の何倍まで優先的に回収できるか)
  2. 議決権(全株一律、もしくは株式種類毎)
  3. 価値を維持する権利(希薄化防止条項等)
  4. 優先配当権(そもそもベンチャーの場合にはあまり意味ないが)
  5. 優先取得権(追加投資や株式譲渡の際に優先的に取得できる権利)


上記の外にも多数の項目があるのだが、細かいところは別の機会に触れてみたい。



海外VCの世界でまず注目されるのは1。これは海外VC投資の世界ではIPOよりもM&Aによる出口の方が多く、この場合1の条項によってどの程度回収できるか直接左右されうからだ。



また、2の議決権についても細心の注意が必要だ。ちょっと古い日本の事例だが、三菱東京フィナンシャルグループがUFJとの経営統合を発表した後、三井住友フィナンシャルグループからもUFJに対して経営統合の申し入れがあって、三菱東京FGとUFJは種類株を使って三井住友FGの申し入れを断念させたようだ(参考:M&Aと企業防衛(2) UFJ・三菱東京統合

商法の規定だと、合併など株主に損害を及ぼしかねない重要事項については、優先株など「種類株」の株主であっても、普通株主の総会とは別に、それぞれの種類株ごとに種類株主の総会を開いて3分の2以上の賛成で決議しなければならないことになっている。

これは一種の「拒否権」だ。上記の記述が改正後の会社法でも有効かどうかは不明だが、株主総会や取締役会などで所定の手続きを取れば可能なはずだ。うまくデザインすれば、昨今騒がれる買収防衛策としての「黄金株」のような機能を持つ。実際、海外の未公開株式の世界では、増資、合併といった会社の重要事項の決議には、株式の種類ごと(あるいは特定種類の株式)の決議が必要とされることがしばしば行われる。



再び古い例で恐縮だが、Googleの株式も議決権については特殊だ。一般株主が保有するクラスA株式と、創業者らが保有するクラスB株式の2種類が発行されており、クラスB株はクラスA株の10倍の議決権を持つと言う。これはあちこちのメディアで話題になったが、例えばこんな具合だ。

具体的にはグーグル株は、一般投資家向けのクラスA株と、創業者らが持つクラスB株の2種類がある。B株は、A株の10倍の議決権がある。1株は平等でなく、経営支配権はB株の株主に集中する。議決権で見ると、創業者2人で5割強、他のグーグル関係者を含めると7割超を握る。大量保有者と固定株主が多く、流動株は少ない。

(中略)

つまり仮に将来、問題が生じて業績が低迷しても、議決権が10分の1の株式を持つ株主がいくら集まっても、経営陣を入れ替えることは難しい。

実は、これはGoogleに限った話ではなくて米国の上場予備軍とも言うべき優良VBにも似たような形態が少なからず存在する。狙いは明らかで、より多額の資金調達をしながら、経営権は創業者が握っておきたい、というものだ。しかしものには限度がある。Googleの例も物議を醸し出した。経営の安定とガバナンスをどうバランスさせるか、答えは簡単には見つかりそうにない。



日本の未公開企業でもこのような手法が増えてくるのかもしれない。しかし、この手の特別な権利をむやみに与えると、ガバナンスが適切に機能しなかったり、逆に拒否権を乱発されて会社としての機動性が損なわれることになりかねないので慎重な検討が必要だ。実際の運用は経験者やプロに相談すべきだろう。



単なる技巧に走ることなく、意義を十分理解した上でより多くのステークホルダーの満足を得られるファイナンス手法が確立されていくことを願ってやまない。


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[VC投資論5] バリュエーション [VC投資論]



今回のテーマはバリュエーションだ。未公開企業の価値を如何に算定し、如何にファイナンスを成功させるかだ。



このブログでは、これまでにもしばしばバリュエーションの話題を取り上げてきた。一言で言うと、「一般的なバリュエーション手法で参考値を算定し、それを元に発行会社と投資家が交渉して、最後はエイヤで決まる」というのが主旨だ。バリュエーションの方法論にご興味のある方は下記をご参照いただきたい。





今回はもう少し実践的な話をしよう。



  • 複数の投資ラウンドを行う際、各ラウンドのバリュエーションは如何にあるべきか


実際、ベンチャー企業においてこれはしばしば起こる問題だ。



起業家の立場で言えば、各ラウンドとも出来るだけ高いバリュエーションで株式を発行したいものだ。相対的に高いバリュエーションで増資する場合、相対的に高い株価で相対的に少ない株式を発行することになるわけだが、こうすることで希薄化の程度が低くなるからだ。希薄化の度合いが少なければ、創業以来持っている持ち株の薄まり度合いも少なく、経営権を確保しておきやすくなる。そんな訳で、「出来るだけ高いバリュエーションでファイナンスしよう」と考えるVBは多い。



しかし気をつけるべきは、一度高いバリュエーションで増資すると、将来再び増資によって資金調達することになったときにバリュエーションを下げにくいということだ。将来、バリュエーションを下げて(=株価を下げて)増資しようすると(これをダウンラウンドという)、既存の株主にしてみれば、手持ち株券の価値が低下することになるわけで、容易には受け入れられないものだ。株主から痛烈な批判や反対を覚悟せねばならず、ダウンラウンドに参加しない投資家が出てきたり、ダウンラウンドそのものを阻止しようとする株主が出てくることもある。ダウンラウンドになると各VCは自らのVCファンドに出資している出資者に対してダウンラウンドの事情を説明せねばならず、キャピタリストの責任問題になることもありえる。そんな訳でダウンラウンドはあちこちで紛糾の種となる。日本と諸外国でも習慣が違うようなので気をつけよう。



このようなことにならないよう、増資の際には将来の資金調達において起こりえることを想定しておくのが重要だ。現在の株主と将来の株主の満足を如何にかなえるか、このバランス取りが難しい。こうした長期的な視点に立った資金計画、資本政策を立てることが肝要だ。



さて、次回はもう少し資金調達のテクニックの話である「株券の種類やその他のテクニック 」の話をしてみたいと思う。


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[VC投資論4] 資本政策と投資ラウンド [VC投資論]

資本政策は増資を考えているVBには必須の概念だ。資本政策とは、資金調達と、資金調達によって影響を受ける経営権や株主利益等への影響とを総合的にプランニングすることだ。



増資によって資金調達すると新たに株式を発行することになる。新たに株式を発行すれば、その増資より前に発行されていた株式が増資後の株式全体に占める割合は、新しい株式を発行した分だけ少なくなる。増資前から株式を持っている株主は、増資によって持株比率が低下することになるわけだ。これを希薄化という。



例えば、ある人が100%自己資金で会社を創業しても、その後第三者の出資金を受け入れて株式を発行すると、その会社はもはや100%創業者のものではない。増資額が大きければ大きいほど創業者の持株比率は低下する。どんどん増資してどんどん持株比率が低下し、創業者の持株比率が過半数を割り込むようだと経営にも影響が出てくる。自分ひとりで物事を決められなくなるのだ。



そこで、下記のような観点で資金調達を計画することが求められるのだ。



  • 資金調達と、資金調達の影響(経営権、株主利益等)をバランスさせること
  • 会社の発展段階に応じた計画的な資金調達を行うこと
  • 投資家への出口、安定株主対策、創業者利益、インセンティブを確保すること




資本政策はそれぞれの会社のおかれた状況や株主の思いによってゴールが変わる。絶対的な正解はない。大雑把に資金調達をしても、後で微調整が効く部分もある。しかし、いくつかはずしてはならないポイントがある。その中でも最も重要なのは下記の点だろう。



  • 会社が自立的に成長していくまでにいくら資金調達しなければならないか
  • 創業者は経営権をどの程度確保したいか


そして、しばしば下記のようなことが資本政策上の課題になるように思われる。



  • 多額の資金調達を行う場合の経営権の確保(特に技術開発系VBでは大きな問題)
  • 各投資ラウンドにおけるバリュエーションの設定方法
  • ストックオプションと税金の関係




資本政策には様々なパターンがありえるが、しばしば見受けられるのは資金調達を何回かに分割することだ。一度に多数の株式を発行するのではなくて小出しにし、会社の価値が高まる都度少ない株式を発行して資金調達することで、第三者に渡す株式の数を出来るだけ減らすわけだ。技術開発型VBではほとんど必須の資金調達法だろう。このように分割された資金調達のことを便宜上「投資ラウンド」という。海外では、便宜上Aラウンド、Bラウンドなどとアルファベットをつけて呼ぶことが多い(これはそれぞれ優先順位が異なる優先株を発行するからでもある。詳しいことはいずれ別の機会に説明しよう)。



さらに詳しく知りたい方は、身の回りのVB経験者、VC、税理士等に相談するのがいいでしょう。独学で勉強されたい方にはVECのサイトなどがお勧めです。


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[VC投資論3] 投資リスクとVCの力量 [VC投資論]

日経新聞等でVCが低リスク志向になったと報じられている。小売外食など比較的リスクの低い業種への投資が増え、インターネット、IT向け投資が足踏み、創業間もない企業への投資も減少、とある。何となくそうなのだろうと感じてはいたことだ。でも、VCは本当に低リスク志向になったのだろうか。そもそもリスクを取るとはどういうことなのだろうか。



私の個人的な経験だが、ベンチャー企業から投資の話しが持ち込まれたときには、まず判っていることと判っていないことを整理する。このうち、判っていない部分で最悪の結果になったときに、何とか対応して持ちこたえることが出来るかどうか、投資家として支えきれるかどうかを考えて投資の判断をする。この「判っていないこと」、うまくいくか行かないか判断できない不確定なもの、これがリスクだ。VCがリスクを取るとは、不確定なものが待ち構えているのを承知の上で敢えて投資することだ。



VCがベンチャー企業(VB)を見るとき、まずキャッシュを生んでいる会社か生んでいない会社かで対応が分かれる。キャッシュを生んでいるVBは比較的考えやすい。そのVBは既にキャッシュを生む仕組みを持っているわけだから、あとはそのキャッシュを生む仕組みを将来伸ばしていけるかどうかを考えればいい。冒頭の日経新聞の記事で小売・外食への投資が増えているとあるが、そうした業種はキャッシュフローが比較的見えやすく、不確定要因も少ないのだろう。



一方、キャッシュを生んでいないVBは、将来どうやってキャッシュを生むか考えなければならない。典型例は技術開発型のベンチャーで、創業してしばらくは製品開発に注力するので売上がない。その期間は赤字でありキャッシュフローもマイナスだ。投資家として考えなければならないのは、そうしたキャッシュフローのないVBが将来キャッシュを生むことが出来るかどうかだ。製品を開発できるか、製品は市場で売れるか、適正なマージンを確保できるかなどなど、不確定な課題は多い。



日本のVCがそうした不確定なものへ投資を敬遠しているとしたら、その原因として下記のような仮説がありえる。



まず、VC側の視点では、



  • VCが判らないものが増えた(何が売れるかわからない)
  • VCに力量(=情報力+判断力+資金力+、、)がない、力量が低下している
  • VCは判らないものには無理をしなくなった(失敗して痛い目にあった)


環境変化として



  • 不確定要素が大きくなっている(何が成功する誰にも判らない)
  • VBの成長過程を支える人材がいない、VBに人材が来なくなった(任せられる人がいない)
  • 市場が成熟している(運に期待することは出来にくくなった)
  • 公開市場が盛り上がりにかける(猫も杓子も公開できた時代は過ぎた)






私の個人的な感覚だが、盛り上がっている時代は(例えばネットバブル時代)、比較的うまく行きやすかったのではないか。多少こなれていない製品やサービスでも買ってくれる市場があった。そうした時代にあっては、よくわからないものにも目をつぶって、エイヤと飛び込むことが出来た。ところが、市場が盛り上がっていないと人はもう少し慎重になる。おそらくはエイヤとやってしまうことも少なくなるだろう。今、日本で起きているのはそういうことなのではないか。



では、VCの先進国アメリカではどうであろうか。アメリカのVCは日本のVCよりも多くのリスクを取るのだろうか。



まず、こういうことが言えるだろう。



  • 米国VCの一件当たりの投資金額は大きいので、リスクが顕在化した場合のインパクトは大きい


しかしながら、こんな側面もある。



  • アメリカのVCには元々VBや産業界にいた人が多く、キャピタリストがそれら実業界に多くの人脈を持っている。人脈と言うよりも「同僚」と言うべきかもしれない。そうした同僚の間で交わされる「ささやき」により、世界の技術動向がどこに向かっているのか、どの会社は中長期的にどんな分野を研究開発しようとしているか、どの会社がどの会社を買いそうか、かなりのことがわかっている。




アメリカのVCは産業界がどこに進むか目星がついており、その方向に沿ったVBを見つければ成功する可能性も高くなる、つまり不確定要因が少ない、だから他の人には怖くて到底投資できないような分野でも投資することができる、という仮説を立てることが出来そうだ。つまり、アメリカのVCは多くのリスクを取っているわけではない。ただ、彼らの持つ情報の量と質は日系VCに比べたらケタ違いなので、日本の投資家にとってのリスクが彼らにとってのリスクではないのかも知れない、少なくともアメリカが強い産業においてはそういう側面がありそうだ。



日本のVCはどうすればいいだろう。私はアメリカを見習えばいいのではないかと考えている。日本にも強い産業はある。自動車、エレクトロニクス、ワイヤレスゲーム、各種サービス、、、等など。そうした産業界と投資家がより緊密に情報をやり取りできるようになれば、リスクがリスクで無くなる可能性が開けるのではないか。


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[VC投資論2] ファンドとは何か [VC投資論]

VC投資論の第2回目として、VCとは切っても切れない「ファンド」について触れてみたい。ファンドを理解しておくこともVCの思考パターンを理解するうえでは重要だ。



ファンドとは何か。いろいろな説明の仕方がありそうだ。投資信託、投資組合、といった投資の商品を表わすこともあれば、投資を行う共同体のことを意味したりもする。金融庁のホームページではこのように説明されているので流用させてもらおう。

ファンドとは、複数の投資家から資金を集め、その資金を用いて行われる事業・資産からの利益を投資家に分配する仕組みのことです。

非常に単純明快な説明だ。「特定の投資目的のために」多くの投資家から資金を集めて投資し、収益を還元する仕組み、と言い換えさせてもらおう。



多くの場合、VCも「ベンチャー企業に投資する目的」で複数の投資家から資金を集めてファンドをつくり、そのファンドからベンチャー企業に投資を行っている(中にはファンドではなく自己資金で投資するVCもあるのだが<例:英国のスリーアイ等>、そうした自己資金も元を正せば株式市場から調達した資金だったりするので、外部の投資家から資金を調達しているという意味では上記のファンドとそれほど意味合いは違わない)。 VCにとってファンドこそが投資を行うための資金の源泉であり、ファンドの規模がそのままVCのパワーを反映している。投資家の信任を得てファンドを募集出来たVCだけがVC投資事業を行うことが出来るが、ファンドを募集できなければVC投資事業は行えない。これは単純だがVCにとってはとても重い命題だ。



そもそもファンドを取りまとめられる力量がなければVCは始められない。たとえ、首尾よく最初のファンドを苦労の末なんとか立ち上げたとしても、もし、そのファンドの運用成績が悪く、ファンドに出資した投資家から不評を買うと大変だ。最初のファンドが満期を迎える前(すなわちすべての資金を投資家に返還してしまう前)までにVCは新たなファンドを募集して投資資金を確保しなければ事業を継続できないわけだが、最初のファンドの運用成績が思わしくいないと投資家は新しいファンドへの投資に躊躇するものだ。運用成績が極めて悪いVCには誰も見向きもしないだろう。実際、2000年前後のバブル期にファンドを立ち上げたものの、その後のバブル崩壊で運用成績が極端に悪化し、そのファンドが満期を迎えるまでに新たにファンドを募集できずに資金が枯渇して廃業や身売りに追い込まれたVCがファンドの大小、有名無名を問わず存在する。VCファンドへの投資家は年金、保険会社、財団などの機関投資家が多いのだが、こうしたプロの投資家達は基本的にリターンを重視する。誰でも自分の年金基金がうまく運用されて金額が増えたらうれしいが、目減りしたら怒るだろう。だから年金運用者等の機関投資家は基本的にリターンを絶対重視する。そうした投資家達から資金を「預かって」運用している以上、VCファンドも「運用リターン」のプレッシャーにさらされ続けることになる。綺麗ごとでは済まされない金の世界にいるわけだ。





このように、VCには「人から預かった資金を運用している運用者」としての側面があるということを理解することで、後述するVCの思考回路や行動原理の多くを理解できるようになるだろう。



もう一つ、ファンドの大きな性質として、「ファンドには満期がある」ことを挙げねばならない。ファンドの運用者であるVCは、そのファンドの満期までにファンドの資金で投資した株式をすべて現金化して投資家に還元しなければならないのだ。ベンチャー企業の多くが未公開で株式に流動性がないので、この現金化というのはとても難しい問題だ。下手をすると二束三文で売り飛ばさなければならない。この問題を解決するために、欧米諸国や日本では別の方法が取られてきた。そのあたりも次回説明するとしよう。


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[VC投資論1] VCとは何か [VC投資論]

今回からしばらくベンチャーキャピタル投資論を展開してみたい。ベンチャーキャピタル(以下、VC)という言葉を聞いたことはあっても実際にVCとつきあったことのない人、VCをもっと知りたい人、といった方々を想定しているので、VCをよくご存知の方は読み飛ばしてもらいたい。



まず、ベンチャーキャピタルとは何だろうか。いろいろな説明の仕方があると思うが、いくつか外すことの出来ないポイントがある。

1.成長志向の強いベンチャー企業に対して

2.成長資金を投資する投資家

上記を理解するには「VCモデル」を理解する必要がある。VCモデルとは、



  • VCは手元資金を使っていくつかの企業に投資する
  • 投資した企業のうち、いくつかは破綻して回収が出来なることがある
  • 投資した企業のうち、いつくかは大きく成長して多額の収益を投資家に還元してくれる


上記のプロセスを通じて、VCは全体として高い利益を追求するわけだ。リスクの高いベンチャー企業に投資する以上、破綻はつきもの。しかし中には大きく成長して収益をもたらしてくれる企業がある。そうした成長企業のおかげでVCは全体としてプラスのリターンを期待できるわけで、これがVCが存在しうる根本原理だ。大きく成長して大きな果実を投資家に提供してくれる企業があるからこそVCはリスクを取れる。逆に言えば、成長志向の強くない企業、成長が見込めない企業にはVCは投資できないわけだ。



このように「VCは成長志向の強いベンチャーにしか投資しない」というのはVCを理解する上で重要だ。VCは何でもかんでも投資するわけではないのだ。また、大きな成長を期待するので、基本的には資金は「融資」ではなく「投資」の形で提供する。これもVCの特徴だ。



また、VCには上記のほかに重要な機能がある。

3.投資した企業の成長を促進するために、VCは投資先企業の事業を積極的に支援する

これもVCの重要な機能だ。これこそがまさにVCの名声を高めているとも言える。米国あたりの著名VCではこれは必須の機能だ。米国に限らず、日本でも欧州でも多くのVCがこれに取り組もうとしている。だが現実は甘くない。投資先企業の事業を支援するとは言っても、一朝一夕に成果が上がるものではないようだ。
1.2.の金融的性格と、3.のようなコンサルタント的性格のどちらの性格が強いかはVCによって様々で、いろいろな考え方がある。1.2.を主眼とするVCがある一方で3.に注力するVCもある。そのあたりの考え方の違いを探るにはいくつかのVCを訪ね歩くのがいいだろう。特に起業家の方がVCから出資を受ける際には、そのVCが上記1.2.と3.についてどのあたりのスタンスを取っているのかあらかじめ理解しておくのは重要だろう。



もう一つ、VCとは何かを語る上で重要な項目だが、



4.VCは機関投資家などから資金を集めてファンド運営していることが多い





ということを知っておくといいだろう。つまり、VCは機関投資家からお金を「預かって」「運用している」わけだ。ファンドには「満期」が設けられていることが多い(専門用語で償還という)が、この満期の存在もVCの行動に非常に大きく影響を及ぼしてくる。VCをこのような「ファンド運用者」として捕らえることはVCの本質を理解する上で極めて重要だ。このあたりは次回説明するとしよう。


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